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国立八条宮学園(こくりつはちじょうのみやがくえん)。
夜の十時をまわる時刻だというのに、敷地内にある博物館を中心に大勢の生徒がいる。
「英司(えいじ)、今夜は捕まえられるかねぇ?」
ぽんっと肩に手を乗せられて俺は誠(まこと)を振り返った。
この厳戒態勢の中、生徒会長に気軽に話しかけてくる人間は限られている。
「当たり前だろう。高等部の生徒会役員に衛士(えじ)を総動員してるんだ。捕まえられないと…困る」
周囲を意識してきっちりとした口調で返すも、今夜も捕まえることができないような気がしていた。
『胡蝶(こちょう)』。
昨夜、博物館に侵入し、結晶を奪った怪盗。
相手が馬鹿じゃないなら、二晩連続で来るはずがない。
となると、この厳戒態勢も無駄になってしまうけど。
人の心配を余所に誠は、思いっきり胸を張った。
「オレが捕まえてやるって。空手を実践で試すのは久しぶりだしな」
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