プロローグ

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はりきる誠に思わず溜め息。 俺の幼馴染みで、生徒会役員じゃないのに怪盗捕縛に付き合ってくれている友情はありがたいが、誠は絶対にお祭り気分であろうことが容易にうかがえる。 腕を回して準備体操をする誠は俺よりも僅かに背が高い。 家は大きい道場を抱えているだけあって、そんな誠が空手の型をきめると空気が震える。 そういえば、と思って声をかけた。 「よく須磨(すま)は来たがらなかったな。こういうお祭り騒ぎみたいなこと、須磨も好きだろ?」 須磨というのは誠の彼女。 須磨と誠は同じような性格をしている。 一言でいうと、体育祭で一番はりきるタイプってやつだ。 「本物の怪盗相手じゃ、裕子(ゆうこ)に危ないことさせられないよ。女の子だからね~」 誠のいいところは、こうやってさりげなく優しいところ。 ケンカの耐えない誠と須磨ではあるが、なんだかんだで仲が良い。 「それに、今夜は花良(かお)ちゃんのとこに泊まりに行くって言ってたし」 「ふぅん…。花良のところ、ね」 俺の微妙な言葉の響きを感じ取ったのか、誠がにやりと笑う。
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