ご主人の告白

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 めっそうもない、私がミチコに手をあげるなんて。  ミチコの躰に痣が……殴られたような痕が──?  しかしそれは犯人が、その男がミチコに暴行したからではないですか。  殺される前から──? 日常的暴力を受けていた可能性、ですか。  そんなバカな。  いえ、最近ミチコと喧嘩したおぼえはありません。  最近どころか、もともとミチコとは、一度もまともに喧嘩したことないんです。  私はむかしから暴力沙汰が苦手でして、殴り合いはむろん、仲の良い友人と口喧嘩すらしたことありません。  そんな私が妻に暴力をふるうなんて……そもそもミチコとは口論になることさえ、出会った頃からないです。  ありえません。  その男でしょう、その男にちがいない。  その、島崎という男の仕業です、きっと。  妻には人のいうことに黙って従うような、気の優しいところがありましたから。妻は私の頼みや子どものワガママも、よく嫌な顔ひとつせず聞きいれてくれていました。  はあ……夫婦生活、ですか。  いえ、正直申しまして、妻とはもうずいぶんと前からない(、、)です。  ──はい、セックスレスでした。  子どもができてからだんだん回数が減ってしまって……どうも家族という関係になってしまってはダメですね。  身内と接するような感覚になってしまって……なかなかそういう気分になれませんでした。  いえ、私は妻を、ミチコを愛していました。最近でも、抱きたいとおもうことはときおりありましたよ。  でも、妻のほうがダメだったんです。やんわり拒まれることが、しばしばありましたね。  いまからおもえば、もうだいぶ以前から妻は、私以外の男を好きになっていたのかもしれない……。  犯人のその男との付き合いは長いのでしょうか。  それとも、ほかにも男が──?  ……ミチコは誰かに恋していたのでしょうか。
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