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事件発覚直後
──11月27日。
22時13分に事件の通報があってからすぐに、無線連絡を受けた警察官二名が駅前の交番から現場へ向かった。約十分後には、三階建てマンション〈スカイハイツ〉の302号室に到着している。
チャイムを鳴らし、110番通報により駆けつけた警察である旨をドア前で告げても、インターフォンがつながるようすはなかった。室内からは物音ひとつせず、何の反応もない。
しばし状況を判断しあぐねて無線で指示を仰ぐと、本部からは、奇妙なことに通報者の携帯電話端末が応答なく、切られないまま、ずっと通話状態である事実が伝えられた。
玄関のドアが施錠されていないことを確認し、警棒をかまえ、緊急態勢ですみやかに警官二名は室内へ突入する。
扉を開放してすぐ、柑橘系フローラルの心地良い香りが二人の鼻腔を刺激した。
茶色のビジネス用シューズとヒールの高い黒のパンプスの二足だけが、明るいライトの下、玄関先に外向きできれいに揃えてある。
靴脱ぎ場からまっすぐ延びるフローリングの短い廊下には、右側に手前からバスルームの折り畳み式ドアとトイレのドアが並び、左手には蛇口、シンク、水切り棚、簡易食器棚、ミニ冷蔵庫が備え付けられたせまいキッチンがあった。
浴室もトイレもドアはあいていて、電気は点灯しておらず、なかは薄暗かったが、見たところ誰の姿もない。
奥にリヴィングへと通じるらしき、磨りガラスの、スリットのはいった室内ドアが見える。
その灯りの点いたリヴィングへと警官が踏みこんだとき、二人の男女が折り重なって倒れていた。
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