S彼がMを殺した

2/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
 ──やめて。  ──はあ?  ──クスリはやめて。  ──ミチコ、突然なんだよ。ふざけんなよ。  ──クスリはやめてください。  ──はあ? ふざけんなって。おまえ、今までさんざんクスリ飲ませただろ。  ──お願い。やめて。  ──黙れ。てか、なに勝手に説教たれにきてんの。ウザイ、クソ女。  ──ご、ごめんなさい。でもあなたが心配で──  実智子の言い訳が終わらないうちに、正面から胸に拳を喰らわしていた。  実智子が小さく呻いた。よろめいた躰をすかさず蹴りとばす。  軽くふっとんで壁にぶつかり、(もた)れ掛かった実智子の頭髪を左手でむんずと掴むと、顔を上げさせてから一発、二発、右の拳で腹にボディブロウをいれ、肩を突きとばし、今度は太ももに蹴りをいれる。  ──殺すぞ。  ──ごめんなさい。  ──はあ? ウザすぎ。なに偉そうに意見してんの。おまえ何様? もっと調教してやろうか。  ──ごめんなさい。  ──このクソ女が。調子ノってると、いいかげん殺すぞ。  ──ごめんなさい。  ヴェランダに通じる閉じたガラス戸を背に、泣きながら実智子は土下座している。  ──おまえ、いっぺん死ね。  ──ごめんなさい、ごめんなさい。でも──  実智子が頭を上げ、また懲りずによけいな言葉を吐こうとした。ブチギレて、その額めがけ右足の踵に体重をおもいっきり載せ、前のめりぎみに蹴り倒す。  ぐん、と実智子は正座した姿勢のまま反り、勢いよく真後ろにひっくり返った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!