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──やめて。
──はあ?
──クスリはやめて。
──ミチコ、突然なんだよ。ふざけんなよ。
──クスリはやめてください。
──はあ? ふざけんなって。おまえ、今までさんざんクスリ飲ませただろ。
──お願い。やめて。
──黙れ。てか、なに勝手に説教たれにきてんの。ウザイ、クソ女。
──ご、ごめんなさい。でもあなたが心配で──
実智子の言い訳が終わらないうちに、正面から胸に拳を喰らわしていた。
実智子が小さく呻いた。よろめいた躰をすかさず蹴りとばす。
軽くふっとんで壁にぶつかり、凭れ掛かった実智子の頭髪を左手でむんずと掴むと、顔を上げさせてから一発、二発、右の拳で腹にボディブロウをいれ、肩を突きとばし、今度は太ももに蹴りをいれる。
──殺すぞ。
──ごめんなさい。
──はあ? ウザすぎ。なに偉そうに意見してんの。おまえ何様? もっと調教してやろうか。
──ごめんなさい。
──このクソ女が。調子ノってると、いいかげん殺すぞ。
──ごめんなさい。
ヴェランダに通じる閉じたガラス戸を背に、泣きながら実智子は土下座している。
──おまえ、いっぺん死ね。
──ごめんなさい、ごめんなさい。でも──
実智子が頭を上げ、また懲りずによけいな言葉を吐こうとした。ブチギレて、その額めがけ右足の踵に体重をおもいっきり載せ、前のめりぎみに蹴り倒す。
ぐん、と実智子は正座した姿勢のまま反り、勢いよく真後ろにひっくり返った。
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