甘い贄

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 こんな時、なんて言ってあげればいいんだろう。これから食われる子を、どうやって慰めればいいのかなんてわからない。    綾女がわずかに小首を傾げ、上目づかいにこちらを見つめる。その瞳は冷ややかで、僕はその場で木偶の棒のように立ちすくんだ。 「……私は綾女よ」  突然、彼女が口を開いた。  かたくなな態度とは裏腹に、その声は意外にも柔らかい。 「う、うん……さっき聞いたよ……」 「忘れたから何も言えないのかと思った」  綾女が視線だけで僕を傍へと呼ぶ。 「……綾女は、怖くないの?」  彼女の斜向かいに膝をつき、ためらいがちにその横顔を覗き込んだ。 「何が?」 「だから……玻璃さまに食われる……」 「玻璃神は優しいから。痛くなんてしないって」 「そんな事!」  ある訳ない。食べられて痛くないなんて、そんなはずないじゃないか……!  声にならない叫びが僕の胸の中で行き場を失う。 「……死んじゃうんだよ?」 「死なないわ。神様になるの」 「僕はそんな風に思えない」
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