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・・・・・・暇だ。
この部屋に入ってから、少なくとも十分は経過したであろう。
やる事もないので勝手に教室の奥から椅子を引っ張ってきて座っていた。
僕は一応呼び出されてここに来たはずなんだけど、なんだこの扱い。
別に憤慨とかそのレベルで怒ってる訳じゃない、けどもちょっとイラっとする。
器が小さい?気にしないで欲しい。....という訳で(どういう訳だ)暇つぶしもかねて僕がここに来た経緯でも振り返ろうかな。
そう、あれはある晴れた春の日の事だった・・・・というほどでもないんだけどね。
でも晴れた春の日の事は確かだ。ていうか本当昨日の事なんだけど。
入学式が終わって数日後、やっとだいたいの教科のオリエンテーションが終了し、通常授業が始まりだした日の事だった。まだ教室での交友関係はあまり構築できておらず、僕は一人寂しく帰ろうと校門へ向かう。そう、これ以上もないほどの哀愁を背中に漂わせてるつもりで。
「おー....お?ねぇねぇ、私の事覚えてる?」
不意に声をかけられて、それと同時に肩をつかまれる。
半強制的に後ろを向かせられることで180度ほど回転した視界の先には、僕よりも背が低くちょうど見下ろせるくらいの背丈の女の子が立っていた。
懐かしい顔。
3年ほど前までは毎日のように向き合っていた顔がそこにあった。
機嫌良さげなニコニコ顔を、ためらうことなくだしている。
彼女の名前は三上結衣。僕の幼なじみであり、初恋の相手だ。
中学から男子校に入る事が決定していた僕は小学校の卒業式、この日に人生最初のかなり大きな賭けをした。聡い人ならもうここら辺で分かるんじゃないだろうか?
そう、愛の告白だ。まあ結果から言っちゃうと敗北だったんだけど。
「あ.....うん、覚えてるよ。ひさしぶり、だね。」
ちょっとぎこちなくなりながらも返答し、小声で「忘れる訳ないけどね」と付け足す。
「ん.....何か言った?」
相変わらず耳聡いなぁ...。
「ううん、別に。で、突然どうしたの?僕なんかに声かけてきて」
すると何かを思い出したように彼女が喋り始める。
「うん、尊はさ、もう入る部活とか決まってる?」
尊、この声に自分の名前を呼ばれるのはかなりひさしぶりな気がした。
一応卒業した後も何回か会ってるんだけどね。
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