その1

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八代尊(やしろみこと)は困惑していた。 目の前で薄暗い部屋の床に這いつくばるようにして何かを記している少女達(多分同級生だが)を見て、言葉を失っていた。 ひたすら地面にマジックペンを滑らせ、きゅっきゅっと言う音をだしながら書き続けている。 なぜか三人称視点で語っているけど喋っているのは僕、つい最近まで中学三年生だった八代尊です。 ども、こんちは。  さて、状況整理に戻ろう。まぁ先ほども話した通り、前方には3人の女子。床に何か描いている、現在進行形で。ちなみに僕は教室の入り口のちょうどドアを開けた状態で突っ立っていた。小学校の頃の知り合いに呼び出されたため、やってきたこの教室の扉を開けた状態で。 ・・・・・・・・どういう事なんだろう。 なんでこの方々は僕の事を無視してひたすら作業を続けているのだ。正直何を考えているのか全く分からない。まぁ面識がないから当然と言ったら当然なのだけど。 という訳で女子の観察から入ろうと思う。人の第一印象は外見で決まるからな。かなり重要なことのはずだ、うん。と勝手に自分の中で定義して始める事にした。  まずそれぞれのいる場所として一番手前に一人と、奥に二人が並んでうずくまっている。 一番手前の方は肩まで垂れる長い黒髪が特徴的だ。残念な事にこちらに背中を向けている為に顔は視認できないけど。そしてそのつややかな黒髪を地面にたらし、彼女はそれを気にせずにひたすら作業に没頭している。補足として体勢の問題でパンツが見えている。色は白だ。  次に奥の二人。片方は俺の幼なじみであり小学校の頃の知り合いで唯一名前の分かる存在、三上結衣。茶色い肩までの長さの髪に高校生とは思えない童顔と身長が特徴だ。その隣りにはなぜかライムグリーンというか蛍光緑と言うか、そんな感じの色合いの髪の毛を持つ女子。これまた知らないお方で地面にうずくまる様な体勢の為顔が見えない。そして奥の二人も手前の黒髪さん同様に僕を無視している。いい加減に気づいてくれ。薄暗かった部屋に光も入ってきてるだろうし扉が開いた音もしたはずなんだ。おい、気づけよ。と心の中で念じるもののもちろん届くはずもなかった。 なので、彼女達が書き終わるのを待つ事にする。かなり集中しているようだし、邪魔するのも悪いなと思ったので。というか真剣な方々に声をかけるほどの度胸を持ち合わせていなかったので。
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