第8話 ノンフィクション率1%

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『貴方の心が欲しいです』  しばらくの沈黙の後にそう言われた時は、呆気にとられた。  彼女はここ1ヶ月ほどここに通ってきた人で、決して建物には入らず、皆が帰るのを見送る私に話しかけてきた。  最初はずいぶんと切羽詰まったような表情を浮かべていたから、これは見過ごしてはまずいだろうと判断したのだ。  腰を落ち着けて話を聞こうと中へと促したが、彼女はかたくなに、一歩たりとも建物には近づかなかった。  仕方がないので私が彼女について行き、公園のベンチで話を聞く。  内容自体はよく聞く家庭での親との関係だったが、別れ際に握手をした時に、私にはわかってしまった。
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