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今日もカチャカチャと軽快な猫式ブラインドタッチの音が部屋に響いている。ネムの新たな物語が紡がれている証拠だ。だが、突然ネムの手が止まって顔を上げてきた。
「真一、ちょっといいか」
「どうした、ネム」
ここ最近は家にいるときだけ話してくれるようになった。パソコンとの会話は面倒になったのだろう。
「実はおかしな夢を見たんだが、どうにも気にかかるんだ」
「夢?」
「なになに、なにぃー。私に黙ってふたりでお菓子食べるつもりなの。真一、黙って食べるなんて百年早いわよ」
思わず真一は吹き出してしまった。
「あ、なによ。真一の分際で馬鹿にするの」
「ミコ、誰もお菓子など食べていない。『お菓子』ではなく「おかしな夢」と言ったんだ」
「えっ、そうなの。なーんだ。あ、私忙しかったんだ。じゃあね」
ミコは顔を赤くして外へ駆けて行ってしまった。
――まったくミコの奴は。食い物のことでも考えていたんだろう。可愛いっちゃ可愛いけど。
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