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胸ポケットの中から時歪が小声で「ベッピンさんと一緒がいいなぁ」と何度も呟いている。
まったく色ボケな付喪神だ。
アキは慈艶の言葉に従いながら、歩みを進めていく。
「楽しみ、楽しみ」
アキはいつもの怖い笑みを浮かべている。けど、その姿は普通の人には見えない。それが唯一の救いだ。見えたとしたら、皆悲鳴をあげて逃げてしまうかもしれない。それはちょっと言い過ぎかな。
「まだか、まだ着かないのか。もう飽きてきた」
「うるさい、トキヒズミ」
「はい、はい。黙りますよ」
「本当に楽しい方たちですこと。おや、あれは……」
慈艶がフッと着物の女性姿へと変化して、道の先を指差した。
彰俊には何も確認出来なかったが、アキは気づいたようだ。
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