時守家の秘密~猫神様がやってきた~

15/29

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
*** 「あーあ、お菓子食べたいな。でもお金ないし。そうだ、本屋で美樹にでも金借りるか。ああ、ダメダメそんなのダメ。じゃ立ち読みしようっと」  ミコは空を眺めつつ独り言を呟きて歩みを進めた。  ――んっ、匂う。この匂いはネム兄ちゃんの匂い。どこ、どこ、どこ。  ミコはあたりを見回して、ある一点で目を留めた。  嘘、なんで。  ――誰よ、あの子。信じられない。私というものがありながら、あんな子といるなんて。これは浮気よ。  ミコは眉間に皺を寄せて、ネムたちのもとへ目を吊り上げて近づいて行く。 「ちょっと、そこのあんた。どういうつもりよ。私のネム兄ちゃんを誘惑しないでくれる」  アキは、胸倉を掴まれて狼狽えている。 「こ、こわい顔。た、助けて」 「怖い、なによそれ」  ミコはグッと更に力を込めた。 「た、助けて……」  アキのか細い震える声にネムが間に入り込む。 「ミコ、突然なにをする」 「な、なんで。なんで、庇うのよ。私よりその子のほうがいいっていうの。馬鹿、ネム兄ちゃんの馬鹿」  ミコは、アキから手を放すと目に涙を溜めてネムに背を向けて走り出した。 ***
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加