7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
***
「あーあ、お菓子食べたいな。でもお金ないし。そうだ、本屋で美樹にでも金借りるか。ああ、ダメダメそんなのダメ。じゃ立ち読みしようっと」
ミコは空を眺めつつ独り言を呟きて歩みを進めた。
――んっ、匂う。この匂いはネム兄ちゃんの匂い。どこ、どこ、どこ。
ミコはあたりを見回して、ある一点で目を留めた。
嘘、なんで。
――誰よ、あの子。信じられない。私というものがありながら、あんな子といるなんて。これは浮気よ。
ミコは眉間に皺を寄せて、ネムたちのもとへ目を吊り上げて近づいて行く。
「ちょっと、そこのあんた。どういうつもりよ。私のネム兄ちゃんを誘惑しないでくれる」
アキは、胸倉を掴まれて狼狽えている。
「こ、こわい顔。た、助けて」
「怖い、なによそれ」
ミコはグッと更に力を込めた。
「た、助けて……」
アキのか細い震える声にネムが間に入り込む。
「ミコ、突然なにをする」
「な、なんで。なんで、庇うのよ。私よりその子のほうがいいっていうの。馬鹿、ネム兄ちゃんの馬鹿」
ミコは、アキから手を放すと目に涙を溜めてネムに背を向けて走り出した。
***
最初のコメントを投稿しよう!