時守家の秘密~猫神様がやってきた~

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「あ、そうだミコの奴、猫の街に行くって言っていたぞ」 「そうか、ならば吾輩も向かおう。手遅れにならないうちにな」 「それなら、俺も行く」 「アキ、行く」  ネムは頷き、部屋の壁に闇の穴を開いた。裏猫道だ。  ――ここに入るのはちょっと勇気がいるな。  ブルッと真一は身体を震わせて、ネムとアキが飛び込んだあとに続いて躊躇いつつも飛び込んだ。風が首筋を撫でていき、一瞬身体がひんやりとしたがすぐに揺らめく明かりが目に映り懐かしい街並みが見え始めた。猫の街だ。  ネムは街へ着くとすぐに鼻先を上に向けてヒクヒク動かし始めた。ミコの匂いを探っているのだろう。耳も小刻みに動かしている。  猫の街は暖かい日差しに照らされていて、気持ちが和んだ。 「みつけたぞ」との声に走り出すネム。アキもすぐに追いかけていく。  真一も追いかけようとしたが、すぐに立ち止まった。家と家の間の狭い道は、人には通り抜ける幅がなかった。アキはやはり猫なんだと、そのとき確信した。一瞬にして黒白猫に変化したからだ。便利なものだ。  ――俺も変化出来たらいいのに。仕方がない、別の道を探すか。 ***
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