時守家の秘密~猫神様がやってきた~

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 獣の咆哮が響き渡り、時守彰俊はカッと目を見開いた。  空耳か? いや、そうじゃない。何者かの気配がする。  闇の中に突如浮き上がる光るものが目の端に映った。いったいなんの光なのか確認するべきだろう。けど、どうしても躊躇ってしまう自分がいる。右側から放たれた光はいったい何だというんだ。心臓がキュッと縮こまるような心地だ。  なんだか寒気がする。どうしようか。見る、見ない。見る、見ない。  好奇心と恐怖とが鬩(せめ)ぎ合い、光に目を向けるべきか無視するべきかと葛藤を繰り返す。  ここはどう見ても、自分の部屋だということは間違いない。ただ、ありえない場所から光を発するものがある。窓があるのなら、外からの光だと言えないこともない。そうあっちには窓などない。壁があるだけだ。つまり、何かが存在する。光る何かが。誰かの悪戯じゃないとすればだが。  座敷童子猫のアキがそんな悪戯をするとは思えない。懐中時計の付喪神の時歪(ときひずみ)だったら、ありえるかもしれないが違う気がする。この張り詰めた空気感は、アキでも時歪でもない別ものだ。  なんだ、いったい何が起きている。
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