7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
***
「ミコ、そこにいるんだろう。早まるんじゃないぞ」
返事はないが、ミコの気配は感じる。奥にある物置小屋が怪しいとネムは、忍び足でゆっくりと進む。アキも同じく足音を立てずに後を追う。
物置小屋の扉は少しだけ開かれている。なんとなく嫌な空気が漂っているようで鼻がむず痒い。それでも、行かなくては。
慎重に。ゆっくりと。
ネムはそっと隙間から顔だけ覗き込もうとした矢先、扉を押し開けられて顔面強打してしまった。痛みに、蹲り小刻みに頭を揺らしているとミコの叫び声がすぐ後ろから飛んできた。
「この泥棒猫が。死んで詫びろ」
――しまった。
すぐさま顔を上げて振り返ると、そこには呆然と立ち尽くすミコと腹部から鮮血が滴り落ちている真一の姿があった。腹には包丁らしきものが突き刺さっている。真一は顔を顰めて呻きながら膝をつき崩れ落ちていく。
なんてことだ。
「そ、そんな。私、そんな……」
ミコは声を震わせて後退りをして、尻餅をつくようにして座り込んでしまった。
最悪の事態が起きてしまった。
おそらく、真一はアキを庇(かば)い間に割って入ったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!