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「た、大変。血が……」
アキも出血する真一に身体を震わせて動揺を隠せないでいる。
ネムはすぐさま真一に駆け寄り「真一、大丈夫だ。吾輩がすぐに治してやる」と声を掛ける。
真一は、血の気を失った顔を向けて小さく頷き微笑みを浮かべた。
「ネム」
「まったくおまえときたら」
「ふっ、だって……」
「いいから黙っていろ」
真一は頷き、弱弱しい笑みを浮かべた。
ネムも頷き返して、身体全体に力を込めはじめ獅子の姿へと変える。それと同時にあたりの一面に煌めく光が包み込み始めた。その光は周りの木々からも大地からも湧き上がってきている。
ネムは真一の肩に手を触れて「安心しろ。すぐに傷は塞がる」と励ます。ミコは青白い顔をして放心状態のままだ。アキもショックを受けてはいるようだが、少しは冷静さを取り戻していると見受けられた。
「すまない、アキ。真一の腹の包丁を抜いてくれ」
アキは頷き、ゆっくりと近づいてくると真一の腹に突き刺さった包丁の柄を掴み引き抜いた。出血はほとんどなかった。ネムの治癒能力が功を奏している証拠だ。
そのとき、近づいてくる誰かの足音を耳にした。
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