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「ミコ、しっかりしろ」
ネムはミコの前に獅子の姿で立ちはだかり、一喝した。風が巻き起こりミコへと突き進む。
真面(まとも)に風を身体に受けとめたミコは後ろへと押されていく。普通だったら飛ばされているだろうにミコはネムの起こした風に耐えていた。
――何か嫌な気がする。ミコはやはり何かに憑りつかれているのかもしれない。
ネムは大きく息を吸い込み、光の咆哮を放った。悪霊がいるとすれば、何か反応があるはずだ。
案の定ミコに異変が起こった。顔を歪めて身体を震わせている。すると鼓膜を突き抜けるくらいの叫び声をあげてミコの身体から黒い影が背後から抜け出してきた。
「おのれ、邪魔立てするな。私は略奪愛を許せぬのだ。そこのおまえのような不埒な者は死すべきなのだ。悪者を庇うおまえたちも同罪だ」
吊り上がった朱色の瞳で睨み付けてくる。
――ミコの想いがこの霊を呼び寄せてしまったようだな。この霊に勘違いだと話したところで無駄だろう。どうしたものか。物凄い妖気を纏っている。
黒い影の足元で、ミコは気を失ってしまったようだ。
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