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「あの、あなたたちはもしや付喪神か何かですか?」
「うふふ、流石ですね。理解が早いっていうのはいいことですわ。わたくしは慈しむ艶ある者ということで『慈艶』です。方位磁針の付喪神ですわ。吉兆、凶兆を予言することが出来る方位磁針なんて呼ばれているのですよ。よろしくね。時には縁結びもしてさしあげますけどね」
慈艶が微笑みながら話すと、隣の三毛猫が口を開いた。
「吾輩は、付喪神ではない。猫神なのだが、あまりそう呼ばれることは好まない。だから、ネムと呼んでくれ。何が何だかわからぬが、よろしく頼むぞ」
「あ、はい」
――猫神か。これはなんだかすごい。それに慈艶は余程自分自身に自信があるんだな。『慈しむ艶ある者』だなんて自己紹介、普通は出来ないぞ。確かに綺麗ではあるけど。どこかで見たことあるような姿だよな。
彰俊はゴクリと唾を呑み込んだ。
「それじゃ、今夜はこの辺で引き上げましょう。ネム様」
「そうか、なら行くとするか。驚かせてすまなかったな。ではまた逢おう」
ネムの言葉とともに、スッと暗闇へ女性と三毛猫は姿を消してしまった。
――今回はどんな依頼なんだろう。
彰俊は首を傾げつつも、とりあえず布団に潜り込んだ。といっても、結局は朝まで眠れなかった。
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