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「あーあ、退屈だ。依頼者が来ないとはなんとも面白くない。何ヶ月も阿呆の面(つら)ばかり眺めていても何にも始まらないからな。あーあ、退屈だ」
――まったく、いつも一言余計なんだからな。
「トキヒズミ、うるさい」
「はい、はい、黙りますよ」
時歪は項垂れて隣の部屋へと歩いていった。
「あ、そうだ。もしかしたら依頼者が来るかもしれないぞ。予兆の夢を見たからな」
「なに? このボケボケが。それを早く言えよな」
時歪は踵を返して戻ってきて胡坐をかいてドンと座り込んだ。
そのとき、玄関チャイムがタイミングよく鳴った。
「依頼者、来た」
アキも笑みを浮かべている。だが、引き攣った怖い顔にしか見えなかった。いつまでたってもアキはうまく笑顔が出来ないようだ。
彰俊は玄関先に顔を出す。
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