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慈艶の話によると吉兆と凶兆が同時にやってくるとのこと。いったいどういうことなのか。どちらも西からやってくるらしいが。方位磁針に目を向けると確かにときどき針が西に止まり震えて再び回り出していた。『西』から来る者か。
彰俊はふと夢のことを思い出していた。あのライオン、いや獅子というべきか。あの者は吉兆なのか凶兆なのか。なんとなくだが、吉兆のほうのような気がする。ネムと名乗ったあの者は、優しい気だった。猫神とも話していた。神ならば、吉兆だろう。けど、天罰を下すのも神だ。
アキは悪いことなどしていないからな。それに猫の物の怪でもある。猫同士だし、吉兆だと信じたい。
ならば、凶兆とはいったい何が起きるのだろうか。
「まあ、あまり気にせず行動しましょうか。ネム様が防いでくれると出ているので」
「ネム?」
アキが目を見開き叫んだ。
「どうした、知っているのか」
「ネム、師匠」
「師匠?」
――どういうことだろう。あの獅子がアキの師匠ってことなのか。けど、アキの力は祖父の蔵の付喪神たちに教わったんじゃなかったっけ。
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