7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「疑問を解決させてあげましょうか」
慈艶がスッと寄り添って来て微笑みかけてきた。彰俊は後退り、顔を赤らめた。
「慈艶、ダメ」
「はい、はい、わかっていますよ。ちょっと虐めたくなってしまってね。ネムはその昔、栄三郎と逢っているのですよ。そのときアキとも逢っているのです。アキの力はすでに備わっていたのですが、ネムはその力の有効活用を親身になって教えてあげていたわね。『間違ったことに使ってはならぬ』ってね。たった一度の出逢いでしたが、それでアキは師匠と呼ぶのでしょう」
なるほど。
「ネム、逢いたい」
「うふふ、ならば早速参りましょうか」
「居場所を知っているのか?」
「はい、もちろんです。ですが、この姿でずっといられないもので、わたくしを持っていってくださいませ。よろしいでしょうか」
彰俊は頷き、「アキ、行こうか」と笑んだ。
「待て、待て、待てぇ。おいらを置いていこうとは、間抜け者め」
時歪はアキに睨まれ、すぐ口を閉ざしたが彰俊に目配せして『連れて行け』と訴えてきた。
彰俊は胸ポケットに時歪を押し込み、方位磁針となった慈艶はアキに手渡した。
***
最初のコメントを投稿しよう!