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sky blue sky
ぼくはいつも屋上にいた。
空にわずかでも近づけるこの場所が好きだった。
今日、高校生になったぼくは中学のときと変わらず屋上に来ては、ただ空を眺めている。
浮かぶ雲をゆっくりと目で追い、ときおり横切る鳥に目を奪われながらもずっと、空をゆくものたちに、空の青色に視線を預けている。
いつか雲や鳥になれれば、と思う。
雲になって風に流され、ひたすらに漂ってみたり、鳥になって風を切り、自由を謳ってみたり。
人間として生まれた以上は不可能だというのはわかっているけど、それでもぼくは憧れて、こいねがうのだ。
空の一部になりたい、と。
・
ねがいごとを再確認してから二か月が経った。
六月になってもぼくはあいかわらず屋上で過ごしている。広大すぎる青色を眺めていると、塔屋の扉がひらく音がした。そちらを見るとひとりの女子生徒がいる。
扉を閉めるや彼女はこちらに向かって歩いてきて、ぼくの名を呼ぶ。なに、と応じると彼女は訊いてきた。
「どうして授業に出ない?」
「きみになにか関係があるの?」
「ないな」
「というかいま、授業中なんじゃないの?」
「授業中だ」
「なんでここにいるの?」
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