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「ウサギはこう思うのです。人間も動物である私も自分自身の身体を傷つけてはならないと…故意に傷つけてはならないと実感します。純粋無垢な姿…汚れなき存在である方がより生きやすい。純潔こそが美しい!親御さんに望まれ慈しみ育てられた身体に入れ墨といった模様を刻むなど人間として最も恥ずべき事なのですよ。自分の体だからどうしようと構わない!それは自傷行為に等しい!身勝手で余りにも衝動的な理由は言い訳に過ぎません。ですから…私はそういった身勝手な人間、自分の身体を大切に扱わない人間が大嫌いだ!純潔でいる事が人間にとって正しい生き方であることを伝える為にエステサロンを開いたので御座います。」何なんだ…意味分からない!狂ってるし、言ってる事も行動も全てがおかしい!ありのままの自分でいていけないの?タトゥーをした人間はあんたにとって全員が罪人なんだね。
「さぁ…この穢らわしい模様を除去しなくては。美蘭様、もうこんな物とはスッパリ縁を切りましょう。」ウサギはそう言うと、ステッキを魔法のように取り出した。手品や子どもの頃に絵本で見た光景と同じだ。彼がこれから掛ける「魔法」は、けしてアタシ達に幸せをもたらす魔法ではない事を察した。ぬいぐるみのようにふわりとしたウサギの手がステッキに触れた時、それはオレンジ色に変わった。オレンジ色に輝くステッキは赤々と燃えているみたいにも見えた。そのステッキを手にしっかりと持ったまま、彼は美蘭の座る席の後ろにゆっくりと歩み寄っていった…。
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