ずっと待ってる光景

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   1 「ずっと待ってるから」  彼女は言うなり、あーん、とかわいい口を大きく開けた。小柄な両手で私の机をがっしりつかみ、この場から動かない意志を示す。給食のデザートである、プリンを狙っているのはあきらかだった。 「お行儀が悪いですよ。恥ずかしくないの?」  スプーンを置き、私は諭すように尋ねる。 「ぜんぜん。だからプリンちょうだい」  彼女は身じろぎもせず、私の顔をもの欲しそうに見つめていた。 「いけません。いいですか? もし私がプリンをあげたら、あなたを特別扱いしたことになります。となると、平等であるはずの学校教育が成り立ちません。五年生にもなれば、それぐらいわかりますよね」 「でも、プリンが食べたいんです」  彼女は必死だった。ぴょんぴょん飛び跳ね、私の机をガタガタ揺らしてくる。  なんて卑しい娘! 私は怒りに任せてスプーンで一気にプリンをかきこんだ。 「先生は悲しいです。あなたがそんな生徒だったなんて」 「あたしも悲しいよ。先生がプリンを全部食べちゃって」
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