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「ずっと待ってるから」
桜舞い散る、ある晴れた日。彼女と学校の廊下ですれ違ったときに、言い放れた台詞。
「なにを?」
オレは思わず聞き返す。
彼女は足をとめ、髪をなびかせて振り返る。
「バレンタインのお返し」
片手を差しだして告げる彼女の顔は妙に真剣だった。
ホワイトデーのことか。けれど、とオレは思う。
「きみからチョコをもらった覚えはない」
「ひどい。板チョコだけど、あげたのに」
あの板チョコの破片がバレンタインチョコ? 驚愕の事実に開いた口が塞がらない。いや、それよりもあんな嫌がらせに近いチョコでお返しをせびるなんて……。
「おめえ、どうかしてるぜ」
彼女に俺のにぎりっぺを手渡すと、俺は一目散に駆けだした。
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