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「ずっと待ってるから」
ボクの問いに彼女は拗ねるように答え、唇を尖らせた。パッチリした瞳を閉じ、催促するみたいに、んー、と顔を突きだしながら。
フルーツ系の香水のにおいが、ボクの鼻腔をくすぐった。胸がドキドキする。いったい、どんな味がして、どんな感触がするんだろう? そんな好奇心が脳裏をかすめる。あわててボクはかぶりを振り、乱れた息を必死でととのえた。
うっすらと彼女の目が開く。潤んだ瞳が妙に色っぽい。すっかり期待されているのだ、ボクは。ああ、なんと哀れなお客さまであろう。
「失礼ですが、お客さま。当店では、そのようなメニューはございません」
努めて優しい口調で伝え、ボクは執事喫茶の店員としての立場をどうにか守った。
「またまた~。裏メニューにあるんでしょ? キス」
「ございません」
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