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「ずっと待ってるから」
夜。合コンの終わった席。ふと漏れた彼女のささやきを聞いてしまい、わたしはテーブル上に散乱した食器類を片づけながら、なにげないふうを装って声をかける。
「だれかお待ちなんですか?」
「ええ。あたしをお持ち帰りしてくれる殿方を」
意固地になっているのか、彼女は正座をし、握った拳をひざに置いていた。彼女なりの決意表明なのかもしれない。
「そうですか」
「なのに、なのに……」
めんどくせー客だなあ。彼女の瞳から流れ落ちる涙を、わたしは黙って放っておいた。
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