乱鴉

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「ほっほ!」 秀山祖師は思わず笑い声をあげた。十郎は馬鹿にされたと思いムッとする。それへ温かいまなざしを向けながらなんどか頷いた。 「そなたはまだ若い。じゃが若さゆえ真っ直ぐじゃ。その真っ直ぐさを10年、維持出来れば立派なもののふに成長しよう」 祖師がつと立ち上がり、十郎に手を差し伸べる。 「しかし困難な道のりじゃ。知恵も身に付けねば。兄弟の多いそなたが飛躍するには、並みの事では足りぬぞ」 差し出された手を取り、十郎は立ち上がりながら答える。 「10年もかけませぬ」 「いずれ解る。そなたは世界を知らぬ。ひとまず菊池へ帰るまでの道のりを、ゆっくり旅されるがよかろう。そこの大方を連れて行かれよ。互いによい修行となる。今夜は大方と共に円覚寺で寝なさい」
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