乱鴉

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昼間の少年の、強い意志を宿した眼差しを思い出す。 12歳という少年から青年へ脱皮していく最初のゆらぎのような危うさを、怒りに満ちた瞳の中に感じた。 どうにかしてやりたいと思う。しかし怒りを鎮めたいのか、それとも少年の望みを叶えてやりたいのか、自分の気持ちもはっきり解らない。 何か、とても強く惹きつけられる感覚は、初めての経験だった。 人目を引かずにはおれぬような、整っているが力強さも感じる少年の寝顔を見ていると、己が秀山禅師に命じられた菊池までの旅路を楽しみに感じている事に気付いて、大方は苦笑した。 その時、うめき声が微かに聴こえた。 先ほどまで安らかだった十郎の寝顔が苦悶に歪み、いつの間にか額には玉の汗を浮かべている。
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