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「大方さまっ!元恢和尚!」
息を切らせて駆け込んできた聖福寺の小僧は、よほど慌てていたのだろう、足元は裸足で作務衣も乱れている。息を整えるまもなく口を開いた。
「聖福寺がっ、寺が探題の兵に囲まれてっ」
「なに!それでどうした」
息が切れて先を続けられない小僧を大方が揺さぶる。気を利かせた十郎が手水場の柄杓で水を酌んでくると、小僧はそれをひったくり一気に飲み干した。
「探題の者が、先ほど大勢の兵を引き連れて寺を包囲したんです!菊池家の者を匿っているだろう、すぐに引き渡せと。さもなくば……」
ちらりと十郎を見ながら小僧が言う。
「さもなくば何だ!」
小僧の肩を掴みながら大方が問う。
「さもなくば……秀山祖師の身柄を預かると」
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