乱鴉

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「悪いのは大方殿じゃない。私がどうしてもと、わがままを聞いてもらいました」 「万一探題方に見咎められて捕られれば、御父上が命を掛けてそなたらに託した想いも、無駄に消える」 少年の言葉に被せるように、相変わらずにこやかに禅師が強くいい放ち、さらに意地悪く付け加える。 「そうなれば匿った当寺も、幕府に難癖をつけられ迷惑を被るかも知れぬ。それは、おわかりでしょうな?十郎殿」 言われてハッとなった十郎という名の少年は、膝の上で拳をぎゅっと握った。 「……申し訳ございません」 頭を下げた少年の肩が震えるのを、優しい眼差しで見つめながら秀山が軽く笑う。 「ふふ、良いから頭を上げなさい。少し意地悪が過ぎたようじゃ」 「それで、御父上の首に何を見た」 秀山祖師がおもむろに問を発する。十郎は意味が解らず首を傾げた。 「危険を犯してでも、どうしても見たかったのじゃろう?では質問を変えようか。御父上の首を見て、何を感じた」
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