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「俺の体が勝手に動いたんですがあれはなんなんですか?」
「玄人の装(くろうとのそう)よ」
「く、玄人の装!?」
「そうよ、これも斬魔剣の能力のひとつ。まぁ平たく言うと初心者モードよ」
初心者モード…なんか一気にゆるくなったな。
「まだ刀の道を鍛えていない素人の体を刀が動かして玄人と同じくらいに動きのレベルに跳ね上げる能力よ」
チートとじゃねぇか!と思ってしまったがこれによって助かったので笑えない…
「まだだ…まだ諦めん」
加治木先輩が立ち直ったようだ。そうだまだ倒してはいない。油断は禁物だ。
「俺は負けない…いや負けられない」
いちいち言い方がヒーローみたいだ。これじゃ俺が悪役みたいじゃないか!
そして加治木先輩が最後の攻撃を仕掛ける。
「いくぞ…必殺、せんぱい…クッ」
だが技名を言い終わる前に勝手に動く俺の体が先輩を斬り捨ててしまった。先輩の体が光の粒となり消えていく。
霊体滅却が働いているのだろう。最後は静かにおわった。
木刀もとい斬魔剣を袋に戻しながら俺はこの日一番の疑問を口にする。
「なんで俺なんですか?」
そう、なぜ俺なんだ。俺に祓い屋の素質なんてない。それに斬魔剣には玄人の装(初心者モード)がついている。それはつまりあの刀は誰にでも使えるということ。言い換えれば、誰でもいいと言うことだ。なのになぜ俺なのか?
すると陽子さんはこう答えた。
「あなたに恋をしたから」
「な、な、なんだってぇぇぇぇぇ!!」
この日一番の驚きと興奮だった…が
「冗談よ」
という一言で消沈した。もてあそばれている…ただ次に放たれた一言は俺の考えとは真逆だった。
「斬魔剣を持てる人間は多くはないのよ」
「えっ、そうなんですか」
「五千万人にひとりくらいなの」
「五千万人にひとり!?」
嘘だろ、つまり俺の存在は奇跡みたいなものじゃないか。
「そんな確率ってあります?五千万人にひとりの人間がたまたま斬魔剣を持ってる人に出会うなんて…」
「いえ、奇跡じゃないわ」
「なぜですか?」
「教えない」
「えっ、そんな」
「今そのことは必要ないわ」
くそ、大事なことを伏せられてる気がする。いや、確実に伏せている。しかし詮索しても陽子さんは答えないだろう。
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