例え標的[ターゲット]が“サツ”の子だろうとも

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例え標的[ターゲット]が“サツ”の子だろうとも

   今回俺に託された任務。  “標的[ターゲット]”は、警察の息子。  罪を犯しちゃいけねぇ正義の存在の息子なのに、そいつは親を使って自分の罪を無かったことにしている。  許すわけにはいかない。  野放しなんて絶対にさせちゃなんねぇ!  反省させて、そいつの人生を見つめ直させてやる。  罪をデリートして、人生を“reset[リセット]”させる。  ──それが、俺のRe:setとして存在する意思なんだ。 「洋一~!」 「んぁ?」  あれから5日が過ぎた、午後3時前。  大きく整備された俊英大学陸上科のグラウンド。  特別トレーニングが終わり靴紐を縛り直していたトレーニングウェア姿の洋一は、遠くから聞こえた声に気付き、その方を向いた。  自分より若干背は低いが、がっしりとした立派な体格で短い茶髪の青年が、こちらに手を振っている。  彼を見た洋一は気怠そうに欠伸をして立ち上がると、彼のもとまで駆け寄り問い掛けた。 「何だよ?富士」 「洋一、嫌な顔しないで見てくれよ」  彼の名前は富士 岳大[フジ タカヒロ]。  同じ陸上専攻科に通う男で、ハンマー投げを専攻している。性格は明朗快活で、見た目に似合わず裁縫が得意だ。それは、Tシャツを自分で作ってしまうくらいの技術を持っている程のもの。  しかし、彼には、洋一をげんなりさせる程の大きな欠点があった。  
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