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「出来れば、容姿が良いキミに行って欲しいのだが、都合が悪いか?」
「いや、別にオレ、何時でも暇なんスっし、出ても構わないッスよ。
カモの女から、全ての金奪ってこりゃあいいことなんスっから」
「あぁ、これはすまないな。いつかキミに、ちゃんとした休みをあげるから、ガンバって貯金まで搾り取るんだぞ。
さぁ、そうと決まれば後は早い。持ち場に戻ってくれ」
顎髭の青年が、七三の人物に一礼してこの場から退出すると、彼は、クツクツと再び不気味に嗤って椅子から立ち上がり、後ろにあるカーテンを開いて、其処にある大きな窓から眼下に広がる街を見下ろした。
人工光が瞬く夜の街並み。
赤、白、黄の三色のライトで、其処に道が有ることを示す車の列に、LEDで淡く照らされたコンビニの駐車場に屯する、髪を染めた似たような格好をした青少年。そして、蔓延る犯罪を絶やそうと、周辺を隈無くパトロールする警察車両。
「フッ、ククク……。さてと、ボクの愛しい奥さんの為に荒稼ぎでもしようか」
──大量にのさばり、あまりにも頭が悪過ぎる純粋無垢なカモ共から、根刮ぎ奪い取ってな。
七三の人物は、カーテンをそっと閉めてながらクツクツと嗤うと、踵を返して腰の後ろ辺りで両手を組み、ゆっくりとした足取りでこの室内を後にした。
秋風が心地よく吹き抜ける、とても穏やかな昼休み時。
「ふぅぁぁあ」
「ハーハハハッ!洋一、今日はノンビリと寝っ転がって大丈夫か?」
俊英大学体育学部内にある、陸上専攻科専用のグラウンド。
其処の芝生の上で、両手を頭の下で組みノンビリと寝転んで欠伸した洋一に、富士は豪快に笑って問い掛けると、洋一はちらっと横目で彼を見て、気怠そうに溜め息して返した。
「平気だ、バァカ。あの女子の大群が来たら、監視役の目をかいくぐって逃げちまえば、めんどくせぇことにはならねーんだし」
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