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「「「キャーーッ!!待ってよーー!!洋一くーーん!!」」」
女子の大群が、黄色い歓声を上げて走っている。
彼女達には非常に失礼な例えになってしまうが、アレはまるで、
──草原を大移動するバッファローの群れだ。
ドドドドドド……ッ
「「「キャァーーーッ!!!!」」」
「のぉわァァあぉぉオ!!」
黄色い声と共に通り過ぎて行く女子の大群に、富士は、土埃の中もみくちゃにされながら、情けない悲鳴を上げる。
それから、漸くその中から解放された彼は、芝生の上にフラフラと倒れ込むと、ゆっくりと顔を上げて、遠方へと離れていく土埃を見た。
恐ろしいくらいのスピードで走る女子の群れ。
今の彼女達は、黒いスーツとサングラスが似合いそうな程、ハンターと化している。
「ガンバ、レー、……洋一。お前な、ら、……逃げ、切れる、ぜっ……」
リアルな逃走中でも、確実に。
富士は、ボロボロの状態でそう呟き思うと、バタリと、再び芝生の上に力無く倒れ込んだ。
ドドドドドド……ッ
ハンターな女子の大群が作り出したとてつもない土埃が、地響きと共に過ぎ去っていく、大学敷地内の木々が生い茂る庭。
……ガサッ
「ふぅ……。ここは危機一髪ってトコか?」
其処の茂みに隠れていた洋一は、それから顔を出してゆっくりと立ち上がり、陸上用のジャージに引っ付いた枯れ草や枯れ草を払い落とすと、辺りを警戒しながら見回した。
前回のミッションの経験からなのか、僅かな人の気配は感じるが、自分を見ているかのような鋭さは無い。
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