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「……よしっ。完全に逃げ切れたみたいだな」
へぇ、案外Re:setでの経験って、こういう逃げたい時に使えるのか。これって、いいスキルじゃね?
洋一は感心しながら思い、一人、その場でうんうんと頷く。その刹那、
──ぞわっ
急に不吉な悪寒がし、ビクリと体を震わせ顔を強張らせると、額から冷や汗を垂らしながら神経を尖らせ、辺りを警戒しつつ見回した。
ねっとりと纏わり付くかのような視線と、触れるだけで、悍ましさに全身が震え上がるくらいの重苦しい空気。
そして、何よりも怖いのは、自分の心臓が直に握られ、そのままグシャリと潰されてしまうかのような感覚。
──ヤバイ。
ヤバイヤバイヤバイ!
あの悍ましい野郎が、ダチの俺を追って観察してやがる……ッ!絶対18禁マンガのネタにする気満々じゃねぇかよ?!
──ブフッ、ざまぁww
「ッ?!」
耳に直に入ってきた、明らかに洋一を嘲笑っている声。
洋一は生唾を飲み込み、神経を張り巡らせて辺りを見回していると、校舎の影から此方を見つめている人物を見付けた。
此方が見ていることに気付いたのか、暗闇を溶かしたような髪をした、少年のような小柄な体格の男が、ニヤリと不穏な笑みを浮かべて見つめ返している。
やっぱり、俺を観察してやがる。
そんなに俺が、お前に悪いことしたのかよ?!
洋一が、その場で硬直して彼を見つめていると、彼は洋一を見てニィィッと嗤い、手にしていたスケッチブックに、ペンで何かを素早く書き込む。それから、チラッと洋一を再び見ると踵を返し、wwと嘲笑いながら校舎の奥へと消えていった。
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