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「──ッハァ!はぁ……、はぁ……」
漸く、悍ましい空気と恐ろしい感覚から解放された洋一は、恐怖を全て拭い取るかのように口から息を吐き出すと、彼が先程まで立っていた校舎の影を見つめて、粗めの呼吸を繰り返した。
あー、ホント、マジでめんどくせぇことになりやがった。
だが、実際、彼を捕まえて止めろとか言うのも面倒なのが洋一の性分で、そもそも、彼は洋一にとって、少し入り難い専攻科の校舎にいる人間だ。
「……めんどくせぇ」
洋一は、深く息を吐き出して半ば諦めたように呟くと、気怠げに頭を掻きながら、富士が待っているであろうグラウンドへと歩き出した。
洋一が、陸上専攻科の校舎の側を歩いていたその時、
「ねぇ、聞いた?自殺したって話」
「ソレ、聞いた。なんか信じらんなくない?」
「ん?」
スポーツウェア姿の女子三人の会話が耳に入り、洋一は少し首を傾げると、彼女達から少し離れた位置へと向かい足を止める。
そして、ジャージのポケットに入れてあったイヤホン型のインカムを取り出し、素早くそれを耳に付けると、スマホを操作しながら彼女達の話の続きに耳を傾けた。
「マジで、チョーありえないよねー。花菜、ウチらと、今日の学校帰りに109に行く約束してたのに……」
「そうそう。ホントありえないよねー。
だってさー。花菜、マジチョーイケメンで、いかにもオトコーっていう彼氏と幸せだったのにぃ、急に自殺って、マジ信じらんなくない?」
「ていうか、何で花菜が死んだわけ?昨日、あんなに楽しそうに、ウチらと帰った筈じゃん?いきなり死んじゃう理由とか、マジ無いし」
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