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完全に意気消沈している相模の左腕を掴み、そのまま自分の腰にその腕を回させると、自分の右腕を相模の肩に回し、平然とした面持ちで歩き出した。
いつもならば、相模のほうが洋一よりも威勢が良いのだが、今回の彼はその威勢が無く、気力も無い。
寧ろ、今はヤケクソになったほうが楽なのではと、心なしか思ってしまう程だ。
「なぁ、相模さん。絶対にターゲットの店に入るまで俺を殴るなよ?殴ったら、幸せなカップルなんて言えねぇから」
「殴りたい。今すぐアンタを殴りてぇけど、その気力が湧かねぇ……」
これは、ホントにダメだ。気力喪失だ。しかも、生きている気力さえも感じられないというオマケ付き。
「はぁ……」
そんな彼に洋一は溜め息をすると、サングラス越しに、繁華街を歩く複数の同性愛者達を見る。
自分達よりも幸せそうに歩く彼らの姿が、自分には二次元の世界のように見える上に、この場所ではとても眩しく見える。堂々とリア充していますと、体全体で言っている。
見ていてスゴく萎えてくる。
嘉手納と翌桧のいちゃつきよりも、とてもリア充し過ぎて萎える。それくらい、此処を歩く人々は幸せに満ちている。
「(あー……、俺まで気力失いそう)」
洋一が、心中でげんなりとしながら呟いた。その時、
──ザザッ
『MUSASHI、SYUSEI。ターゲットの店舗に着いた?』
ワイヤレスイヤホン型のインカムから森泉の音声が聞こえ、洋一と相模は、ハッとしてその場に立ち止まり、インカムに手を当てた。
「いえ、サングラスのマップを見たところ、あともう少し歩いたら着きます」
『そっかぁ。あ、もしヤバくなったら、直ぐに俺かHYUGAに連絡するんだよ?俺達、直ぐにでも駆け付けれる場所に待機してるからさ』
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