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ホテルマンが言うには、あの警報機は元々普通に赤いランプが灯るものだっという。でもいつからか青い光が灯るようになった。
警察や鉄道会社の人達が調べても何の異常も出てこない。でもランプは青いままだ。
それでも異変はないということで警報機は放置されたが、ある日、突如ランプが赤く明滅した。
その翌日、踏切向こうに人間の亡骸が横たわっているのが発見された。
そしてそれ以降、普段は青い光のランプが赤くなるたびに、あの踏切では大なり小なりの異変が起きるようになったという。
ホテルマンの話はこれだけで、本来赤色の警報機がどうして青く光っているのか、最初の遺体はどういう理由で亡くなったのか、それらはいまだに謎のままらしい。ただ、今も起きている怪異に遭遇した人達は、みな、あの踏切の側で冷水を浴びせられたような悪寒に見舞われたと証言したという。そしてその内の何人かは、今の俺とまったく同じ状態になったとか。
どうやら俺は、些細な好奇心のせいで、自分からとんでもない危険に関わろうとしてしまったらしい。
手を引いてあの場から逃げさせてくれた人に感謝しないとな。といっても、怪奇現象に会った人たちの話は聞けたけれど、その人達がどう助かったのかまでは判らないらしいので、結局、俺を助けてくれた人の情報を得ることはできなかったけれど。
結局この出張以降、俺はあの土地には足を向けていない。仕事でもなければ行く理由がないし、怖い思いをしたから私的に行きたいとも思わないからな。
それでも、普通に暮らしていて、たまに踏み切りの警報器が鳴っているのを見るたびに、その赤い明滅に、背筋の冷たくなるような恐怖と、あの時俺を助けてくれた誰かの、感謝すべき力強い手の感触を思い出す。
青い警報機…完
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