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青い警報機
出張で止まったビジネスホテルから、やけに気になる踏切が見えた。
踏み切りのこちら側は道も広く、周辺には民家もたくさん立ち並んでいるのに、向こう側に建物はほとんどない。細い道が、線路向こうに広がる森林に飲み込まれるように存在している、そんな踏み切りだ。
とはいえ、それだけなら別に気になりはしないのだが、そこの踏切は、列車が通ると青色のランプが灯るのだ。
あんな色の警報器は見たことがない。というか、青でもいいなんて初めて知った。
出張期間は一週間。もちろん一日中ホテルにいる訳ではないので、踏切を目にする時間はごく僅かだ。けれど物珍しさにすっかり興味を引かれ、一度近くで現物を見ようと思った。
仕事終わりの夕方。
接待を兼ねた食事会が今日は早めに切り上がり、チャンスだと、俺はホテルではなくあの踏切に足を向けた。
覗いていた時にも思ったが、元々線路の向こうに民家らしきものがないため、踏切を渡る人間は誰もいない。だから踏み切り正面に立っているとどうしても目立ってしまい、下手をしたら飛び込み自殺を考えていると思われかねない。
だから俺は、踏切から少し離れた位置で列車の通過を待っていた。
だんだんと日が暮れて辺りが暗くなっていく。それでもなかなか列車は通らない。
あまり列車の本数がない路線なのか。それでも、いつも見ていた時間くらいになれば一本くらいは通るだろう。
そんなことを考えていたら警報機が鳴り出した。でも、ランプの色が青じゃない。
ビジネスホテルの位置から考えても、いつも見ていた踏切は確かにここだ。なのに鳴り響く警報機は、どこにでもあるような赤色の明滅を繰り返している。
ほんの数日だが、毎日あの青いランプを見てたんだ。見間違いということはない。
理由は判らないが、今日は赤いランプが灯る日なのか? それとも昨日までが、青いランプの試し期間だったとか?
何であれ、せっかく見に来たのにという失望感が湧く。
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