動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   その隙に、男は肩より少し長めの赤茶髪を靡かせ、郡上との間合いを一気に詰めながら、彼の棒を持つ右腕を右手刀で強く打つ。  それから、彼から素早く棒を奪い、スクリーン側のドアの方へ放り投げた。  男のその動きを見ていた洋一は、ポカンと口を開けて額から冷や汗を垂らし、その場で硬直した。  赤茶の長髪、短時間でも確認出来る高い身体能力、最早、記憶から消す事が出来ないくらいに聞い慣れた声。 「「「キャアァァーー!!」」」 「「「さがみーーん!!」」」 「(何で、お前がこの大学に居るんだよッ!?)」  再び湧き上がる黄色い歓声の中、洋一は驚愕して、心中で叫んだ。  まさか、バディの相模[コイツ]がこの大学に現れるだなんて、想像すらもしていなかった。 「ほらな。やっぱり、今回の特別講師は二人いたじゃねぇかww」  恵分が、嘲笑を込めた「ww」を語尾に生やし、教壇の近くでサングラスを取り払う相模を楽しそうに見る。  そんな彼女の傍らで、洋一はテンションを最低まで下げると、だらんと手摺りから両腕を垂らし、教壇に居る相模と郡上を見つめた。 「どうやら、皆の中の女子の一部は分かっちまったようだが、ここらで、改めて彼を紹介しよう。  声優業界一の破壊魔であり、屈指のアンチ数を持つ天性の嫌われ者。  愛称・“さがみん”こと、相模守政だ」 「どうも~。嫌われ者な破壊魔くんの相模守政です~。  って、コヴルァ!誰が、破壊魔で嫌われ者だ!  俺は、誰よりもまともな大人だし、嫌われてなんかいねぇし!」  相模が、直ぐ様、郡上の紹介に訂正を入れると、この室内に居る生徒達がドッと笑い出し、不愉快になった彼は殺気立てて、郡上の胸ぐらをわし掴んだ。  
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