動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   星やハート、それに鳥や猫の形をした可愛らしいクッキーが入っている。しかも、よく見てみたら、どれもこれも手作りだ。 「手作りクッキー?」 「こりゃ、相模くんの手作りクッキーかもな」 「え?マジかよ?」  確かに、相模は料理が出来る。  が、クッキーを此処に居る人数分作ったとなると、相当時間と労力を使ったのだろう。  だが、これには少し一つの疑問が浮かんだ。 「相模さん、作る暇あったのか?」 「そりゃあ、たまたま収録とかのスケジュールが無かったからじゃね?  でねえと、こんなに作ることなんか無理だぜ?」 「ふぅん」  洋一は、半ば興味無さそうに小さく頷いて、持っていたクッキー入りの小さな袋をバッグに入れると、軽く息を吐き出して教壇を見つめた。  すると、郡上が教壇に立ち、満足げに笑って両手を教壇の上に突くと、マイクに向かって声を出した。 「よぅし。皆、プレゼントは貰ったみたいだな。これから、講習を開始するぜ!」  あれから全ての講習が終わり、放課後のチャイムが、俊英大学中に鳴り響く。 「『芸術学部のゲストルームで待つ。』って、言われてもなー……」  マップを見て覚えるのが面倒なので、どの学部に何が何処にあるのか、サッパリ判らない。  芸術学部の校舎内を歩いている洋一は、面倒臭さそうに呟いて頭を掻き、バッグからサングラスを取り出して、それを直ぐに掛けて弦のボタンを押した。  面倒だから、こういう時には、自分専用ツールの“追跡者の黒眼[チェイサーズ・アイ]”を使って、登録されている相模が何処に居るのかを探せば、あっという間に彼が指定した場所が発見出来る。 「おっ!」  早速、レンズにマップが現れ、相模が今現在居る場所が表示された。 「やっぱ、俺にはかなりの必需品だな。コレ」  
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