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「スッゴイ。なんか尊敬しちゃうんだけど~」
また洋一の弁当からザンギを摘んで、ソレを嬉しそうに食べる恵分の傍らで、翌桧は、洋一の弁当を少し羨ましそうに見つめて呟くと、嘉手納が、蒼く晴れ渡る空を見上げてボソリと呟いた。
「翌桧のために、俺も弁当を上手く作れるようになろうかな……」
「ちょっと、練ってば、何言ってんの?」
彼の呟きに、翌桧がほんのりと頬を紅く染め、彼に擦り寄りながら微笑む。
段々と、二人の周辺の空間が暖かくなってきた。そんな気がして、洋一は少しだけ表情を曇らせた。
「あたしが弁当を作ってあげるから、練は頑張らなくていいから」
「翌桧……。ありがとう」
リア充大発動。
「頼むから、それは余所でやってくれ」
「ハハハハハッ!」
この場に訪れた春の空気に、洋一は完全に呆れて呟くと、隣にいた恵分がケラケラと笑い出し、自分の弁当のおかずを一口食べた。
「こうじゃねぇと、翌桧と嘉手納らしくねえだろ?
ほら、洋一、さっさと弁当を食わねえと、食べる時間が無くなっちまうぜ?」
「あぁ。
はぁ……。お前みたいに、そうやって笑い飛ばしてしまう思考が欲しいぜ」
「やりてえところだが、オマエにソレをやっても意味無え代物だなww」
「(なんかソレ、地味に傷付くんだけどよ)」
洋一は眉根を寄せて、じとりと横目で愉快に笑う恵分を見ながら、黙々と弁当を食べ始めた。
彼女の割り切った性格には、自分には無くて少し羨ましいと感じる部分もある。
洋一の性格とは正反対な部分があるからなのだが、ちょっと洋一には複雑な部分も彼女は持っている。
それは、容姿端麗で才能はトップクラスの、世間に名が知れた有名人であること。
有名人になったお陰で、洋一は、ほぼ毎日のように女子達に追い掛けられているが、恵分の場合は、ファンと直ぐに打ち解けて交流までする為、狡いと思うこともあった。
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