動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   それ以外は、洋一と恵分は共通して友達は多く、ファッションセンスが抜群で、気配りが出来る基本的な性格は同じ。  それ故に、実は、俊英大学の生徒達にとって羨ましがられる完璧な存在なのだが、二人は、それに全く気付いていない事も同じだ。  ──ピーンポーンパーンポーン…… 「ん?」  校内放送のチャイムが鳴り響き、これに反応した洋一は、ひたすら動いていた箸をいったん休ませ、ペットボトルに入っている緑茶を飲む。 『芸術学部声優専攻科の皆さん、こんにちは。本日、午後1時半から、この俺、特別講師・郡上甲牙先生による、楽しい講習を開始致します』 「えっ?!郡上さんっ?!」 「ちょっ、何だとっ?!」  翌桧と恵分が、ほぼ同時に目をギラリと光らせて、慌てて弁当を食べながら、放送に耳を傾けて集中する。  その目は、先程の彼女達とは違って、何故だか見ている此方にとっては凄く恐ろしく、そのまま勢いよく狩られてしまいそうな感じだ。 『他の芸術学部の生徒さんで、この放送を聞いて少し興味を持った方、どなたでも大歓迎致します。  芸術学部の第二大講義室まで、どしどしお越し下さい。皆さんの参加、お待ちしております』 「ちょっと?!コレは行かないと、かなり損だし!」 「こりゃ、楽しく見学出来るチャンスだぜww」  弁当の残りを口に放り込み、空になった弁当箱を片付ける彼女達に、洋一は、ミニトマトを気怠く食べながら問い掛ける。 「なぁ、何で郡上さんで、そう躍起になってんだ?ただの講師じゃねぇの?」 「ねぇ、洋一。マジでバカ?この人、ただの講師じゃないんだから!スゴイ人なんだから!」 「え……?」  ──何で怒鳴るし?!ソコ違くね?  
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