動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   翌桧に怒鳴られて、洋一が、ポカンと口を開けて呆然としていると、サメのバッグに弁当箱をしまい込んだ恵分が、ケタケタと笑って話し出した。 「洋一、郡上さんはな、腐女子の間では、とっても名が知られている最もポピュラーな男性声優なんだぜ?  まあ、週刊飛翔の某アニメで、かなりの難癖声優と長年共演していた人でな。もしかしたら、オマエも何処かで聞いてる筈だぜ~?」 「聞いてるって、言われてもなぁ……」  ──何のキャラを演じていたのか、全く興味無いから解らねぇし。  洋一は面倒臭そうに頭を掻いて、長葱入りの玉子焼きを一口食べると、翌桧が、自分のバッグを持ってその場でスッと立ち上がり、弁当を食べ終えた嘉手納も、彼女に続いて立ち上がった。 「翌桧、これから場所を取りに行くんだろう?」 「もちろんじゃん!つか、練、ちょっと焦らせちゃってゴメンね?」  自分のバッグを肩に掛け、彼女のバッグをそっと持つ嘉手納に、彼女は苦笑して彼を見つめる。  すると、彼は、愛しい彼女を見つめ返して優しく微笑み、首を横に振った。 「ううん、気にするなよ。今はそっちを優先しないと、翌桧は、良い場所を取れずに後悔してしまうだろう?」 「もう。練ってば、ホンットすごい優しいんだから」 「あーー……」  マジで頼むから、俺がいない場所でやってくれ!  また目の前でいちゃつき始めながら、この場を仲良く手を繋いで歩き去っていく翌桧と嘉手納。  このカップルに、洋一はげんなりとして、心中でとても嫌そうに呟きながら、弁当を黙々と再び食べ始めた。  バタンッ  そして、二人が屋上から去ってドアが閉まり、この場に静けさが戻ると、恵分が、ニヤニヤと笑いながらフェンス越しに見える俊英大学の景色を眺め、弁当を食べ続ける洋一に話し掛けた。 「なあ、洋一。オマエ、次の講習ってあンのか?」  
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