動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   そして、恵分が大きな両開きの扉の前に立ち、彼女の隣に並んだ洋一は、深く溜め息を吐き出しながらその扉の上の標札を見ると、呆れた顔をして扉を開ける彼女を見た。 「お前ってヤツは……」 「別にいいじゃねぇかよ。オマエには良い経験になるんだぜ?」 「はあぁ……」  とても愉快そうに笑って言う恵分に、洋一はまた深く溜め息を吐き出すと、彼女に背中を叩かれて、開いた扉の向こう側へと入った。  彼女に連れて来られたのは、先程の校内放送で流れた第二大講義室。  其処は、80人は入れるくらいの二階分の広いスペースで、劇場のような造りで席がびっしりと並んでおり、その下まで続く席の前方には、大きな劇場用スクリーンと教壇が設けられた場所。  そう、彼女は、洋一を自分の付添人として此処に連れて来たのだ。 「恵分。お前なぁ、他のヤツと一緒に此処に来たらいいだろ?」 「あぁ、そうしたい。  だが、しかし!今回は、オマエじゃねぇと意味が無えんだ」 「ハア?!どういう意味でだよ?!」  ニヤリと不敵に笑って告げる彼女に、洋一は訝しんで声を上げると、彼女は扉の前から横へ移動しつつ、下の方に見える教壇を見つめて話し出した。 「洋一。俺の読みが合ってりゃあ、今から始まる声優専攻科の特別講習、その講師は郡上さんだけじゃねぇ筈だ」 「は?だってお前、これから始まるのは、その人が講師でやるヤツだろ?  特別講師みたいな人が、もう一人来るってことかよ?」  取り敢えず洋一は、横へと進む彼女を追って問い掛ける。  すると、彼女は、足を止めながら洋一の方へと振り返り、教壇側にある手摺りに寄り掛かって答えた。  
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