動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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  「そうだ。  ほら、俺んとこのフロアのパソコンルームで、オマエ、厚底を履いた黒スーツの男に会っただろ?」 「あ、あぁ。お前がサインを貰おうとした人な」 「つまりは、だ。ソイツが、この講習の特別講師として現れるってことだぜ」 「はぁ……。お前なぁ」  確信を持って笑う恵分に、洋一は完全に呆れ、手摺りに寄り掛かりながら額に手を当て、溜め息をする。 「違うかも知れないのに、その自信はドコから湧いてんだよ」 「俺の勘だけど、ソレが何か?」 「はぁあ……」  講義室内に生徒達が集まって来る中、洋一は、深々と息を吐き出した。  もう、彼女に対して何かを言う気力が無くなった。  洋一はくたりと脱力して、とてもやる気なさそうに教壇を見つめていると、其処に、パソコンルームで出会ったあのスーツの男が、両手にパイプ椅子2つを持って上がり、それを並べていた。 「あ……」 「な?」  恵分がニンマリと笑って、唖然とする洋一の顔を見つめてくる。  彼女の言った通りに、あのスーツの男が講義室に現れた。 「ホントに現れるだなんてな……」 「いや、寧ろ現れるために、この講義室に来たとしか思えねぇなww」 「あの人が、お前が言ってた“嫌われ声優”、だからか?」 「あぁww」  洋一と恵分がスーツの男を見つめて話す中、この講義室に沢山の生徒達が集まり、あっという間に此処の全ての席を埋め尽くした。  キーンコーンカーンコーン……  講習開始のチャイムが鳴った。  これに合わせて生徒達が一斉に立ち上がる中、大きなスクリーン側のドアが開く。  そして、其処から一人の大きめのヘッドホンを首に掛けた短髪の男・郡上が、ファイルとマイクを片手に教壇へと進み、スーツの男性の隣に並び立った。  
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