動き出す『者』と、“浮上[あ]”がり出した『モノ』-2

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   彼は、キョトンとしたまま目を点にして、郡上を見つめて首を傾げる。  すると、郡上は、教壇から少し離れてニヤリと笑い、それの影に隠してあった木製の棒を取り出して、その棒を彼に向けた。 「さぁ、皆。これから、この棒で彼を攻撃するから、瞬き無しで見ておくんだぞ?」 「ちょ、ちょっと?!郡上さん、僕は貴方のお手伝いに来たんですよ?!」  突然の事に、彼はおどおどして両手を前に出し、郡上は彼の言葉を聞かずに身構えた。 「問答無用。覚悟しろっ!」  郡上が、彼の腹部目掛けて棒を横に振り払い、彼は瞬時にその攻撃を躱す。  その躱し方を見ていた洋一は、目を見開き唖然とした。  ハットを抑えながら軽く飛び上がり、身体を伸ばしたまま後ろへ回転して床に着地し、今度は、斜め上から振り下ろされた攻撃を当たる寸前で横へ瞬時に躱して、素早く郡上の背後へと回り込む。  その一連の動作は、まるで戦闘慣れをした人物の動きで、何故か、とても見慣れた一人の男の姿と重なってしまう。 「郡上さん、僕を襲うだなんて止して下さいよ!  まさか、この為にその棒を用意していたんですか!?」 「あぁ。じゃねぇと、生徒達皆の反応が楽しめないからな!」 「そんな事に人を使うとは。はぁ……」  愉快かつ不敵に笑う郡上に、男は呆れて溜め息を吐き出す。  そして男は、下を俯き深く深呼吸すると、ハットに右手を当て、サングラス越しに彼をジッと見据えた。 「──大ッ嫌いだよ、アンタ」  男はそう低く言い放ち、被っていたハットを掴んで、それを郡上の顔面に向けて投げた。 「おぶっ?!」  ハットが見事に顔面に直撃し、郡上が一瞬だけ怯んだ。  
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