淡い苦味

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カーテンの隙間から差し込む目に眩しい朝陽 昔読んだ本の中で「明けない夜はない」と言っていたのはシェイクスピアだったか… 残念ながら今日も夜は明けてしまった。 それでも朝がきたことを認めたくなくて寝返りを打つと、早く起きろとでも言うように盛大な音を立ててベッドから転げ落ちた。 二日酔いの頭をベッドの角にぶつけて一瞬で目が覚めたと同時に、今度は全身を鈍い痛みに襲われた。 寝覚めは最悪。 頭を押さえてなんとかベッドに這い上がると、私は先程からベッドの脇でけたたましく鳴り響いているスマホのアラームを止めた。 シャワーを浴び、ニュースを見ながら軽く朝食を摂る。 食後は決まって挽き立てのブラックコーヒー 飲み始めて8年。 嫌いなコーヒーを飲めるようになろうと思ったきっかけはなんだったか。 単純な私のことだから、どうせ憧れの人が飲んでたとか、友人にバカにされたとか、くだらない理由だろうけど。 二十歳を越えて香りの楽しみ方はわかってきたような気がするけど、何年経っても苦いものは苦い。 「やば…」 時計を一瞥して、慌てて食器を流しに片す。 今日は遅刻するわけにはいかない。 洗面所で歯を磨き、気合いを入れる為に胸につくくらいの長い髪を高い位置に束ねた。 パリッとした白いシャツにスーツを羽織れば自然と背筋が伸びる。 戦闘服に身を包んだ私は黒いヒール靴を履いて家を出た。
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