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「…やだなぁ、だめですよ?そんな弱気な事を言ってたら…。」
凍りつくような空気を感じながら、私は無理矢理笑って辛うじて言葉を絞り出す。
そんな私に、父はさらに言葉を続けた。
「…約束を守れなくてごめんな…飛鳥…。」
…私の思考が一瞬止まった…が、あわてて頭を振って再起動させる。
「お嬢さんへの伝言ですか?それなら奥様にお伝えした方が…。」
ひきつる笑顔で答える私に、今度は父が首を横に振った。
「…君に言ってるんだよ、ナナシさん。」
私は目を見開いた…頭の中は真っ白な状態になってしまった。
「…今の時代では映画などの作り話の中にしか無いが…君の時代にはタイムマシンがあるのかな…?」
ホワイトアウトした脳内に、父の声が静かに響く。
「瑞穂にそっくりだなぁ…それに今の飛鳥の面影がある…雰囲気が変わらないところがあるよ…。」
父は確信しているようだ…どうして…タイムスリップなんて話を思いつき、信じた…否定しなかったの…?
「…今の飛鳥と歌っていた歌…覚えているんだね…。」
見開いた目から涙がこぼれる…今、父の言葉を否定しなければ…やっと…。
「…よくお風呂で一緒に歌ってたから…一緒に歌えるはずだと思ったんだ…。」
私はそう答えた…やっと…父と娘として話せるんだ…。
「…自分でも信じられない状況なのに…信じてくれると思わなかったなぁ…。」
涙を拭いた私は、今度は自然に微笑むことができた。
「…お互いに夢を見ているような感覚かもしれないね。」
父も微笑み返してくれる…その父の言葉に、私は少し頷いた。
「…でも、この『信じられないこと』を信じれば、親子として話ができるんじゃないかと思ったんだ。」
父が続けた言葉に私は改めて頷く…お父さんも私と同じように思ってたんだ…。
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