第1章

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「あぁ、昨日は呑みすぎた」 ちょっと二日酔いでフラフラする頭で駅へと歩く。 「今日は、得意先に挨拶回りだったな」 面倒な仕事。 好きでもないオッサンに媚びへつらって、ニヤニヤ笑うだけの仕事。 それで、商品を買ってくれればまだいいが、そんなことがあった事例は、少なくともここ十年はない。 全くもって面白くない仕事だ。 それに比べ、昨日の飲み会は楽しかった。 気のいい奴だけ集めたのもあるだろうが、何か意見を言っても、みんな「そうですね」って同調してくれたもんな。 なんだっけ? なに言ってたっけか? まぁ、いいか。 おかげで、お酒がほんとに美味しかった。 あんなに気分よく酔えたのは久しぶりだ。 だのに、今日ときたら……。 いっそ、仮病で休んでやろうか? いや、でも、有給残ってないしな。 クソ課長に言われそうだ。 「お前なんて、クビだ!」 なんてな。 そうやってケラケラ笑っていると、いつもの駅に着いた。 ん、落ち着いて考えてみると、ケラケラ笑いながら歩くって、俺ってば不審者だな。 ヤバいヤバい。 ちょっと気を付けねば。 会社でやった日にゃ、それこそクビかもしれん。 とりあえず、顔を引き締めて、仕事モードにしないと。 あぁ、でも、電車が止まれば堂々と休めるよな。 なんか、昨日の帰りも止まってたし、今日も……と、運行表示に赤文字はなし。 平常運転ですか。 まぁ、当たり前だわな。 僅かに思った希望を棄て、定期券を改札機にタッチさせる。
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